ロングランエッセイ

Vol.88 増築

URB HOUSE PHOTO

 二十五年前に建てたブロックの家と八年前に建てた鉄骨の家の増築である。まず、駐車スペースが坂の途中にあって不便なことを考え、ブロックの家に古くからあった地下車庫を利用して二台分に広げた。増築する部分も、古くからあった物置を基礎に使って木造で建てることにした。どっしりとしたブロックの家とスッキリしたガラス張りの鉄骨の家の前に、板張りの木造の家を建てるのであるから、構造の異なる三つの表情を持った家が並ぶことになった。
 新しい木造の家は鉄骨の家とつなげることになったが、このように異なる構造をつなげるには、近頃むやみに制約が増え、少し面倒になってきた。心を込めてつくった家であっても、世代を超えて使っていくためには、住む人の家族や暮らし方の変わりように合わせて、住まいも改造や増築をしていかなければならない。一戸建ての住まいなどの小さな建物に限っては、もっと緩やかな指導にして容易に増改築をすることができるようになると、これまで住んで自分たちの暮らしの染み込んだ味わいのある家を使い続けやすいと思う。
 ワインの年代物ではないが、二十五年ものの家、八年ものの家、今年の家が建ち並びながら、それぞれが、それぞれの味わいを積み重ねながら、十年、二十年と経っていく姿が楽しみである。このように住みつがれていく家が多くなればなるほど、落ち着いた、心地のよい成熟した街並みが生まれる。小樽や函館の町の風情は、このようにしてつくられてきたのだが、札幌の街は、この時間を内包した風情に欠けている。新しい街札幌から落ち着いた街札幌に移る時期になったのではないだろうか。

住宅雑誌リプラン・103号より転載


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