ロングランエッセイ

Vol.126 倉本聰氏からのメッセージ

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札幌市で開催されたG7札幌 気候・エネルギー環境大臣会合に向けたメッセージが、4月17日に発表された。北海道で、人の心と向き合うことの重さを伝え続けてきた倉本 聰氏の文章が心に沁み入った。じっくり読み込んでほしい。特に「文明というこのスーパーカーは、ブレーキとバックギアをつけ忘れました」の一節には、「文化というブレーキを忘れているではないか!」という言葉が潜んでいるし、誰でも気が付きやすくしてあるので、これを呪文のように唱えるのがいいと思った。文明には未来しかなく、文化には過去しかないとか、文明はハヤリ・スタリで、文化はそれの残りかす、ともいわれる。また自分たちがつくり上げていく文化(これからの過去)は、浸りきっている今の文明から、何を選ぶかにかかっているといわれても分かりにくいが、この言い回しなら誰もが気がつく。文章の頭にある「あなたは文明に麻痺していませんか」という問いで、文化の存在を匂わせるあたりもすごい。
 これからの地球を考えるとき、クラーク博士の「少年よ、大志を抱け!」より、この「ブレーキとバックギアをつけ忘れた」ことを自覚させることの方が必要だと思う。このメッセージは、1992年リオデジャネイロでのセヴァン・スズキ(12歳)の発言、2012年のウルグアイのムヒカ大統領(77歳)の質問、2019年ニューヨークでのスウェーデンのグレタ・トゥーンベリ(16歳)の挑発に匹敵する、日本の文化人だからこそつくり得た奥行きのある、優れたメッセージだと思った。このメッセージは、アルテピアッツァ美唄の庭に置かれたベンチに座って、意図を噛みしめながら読みたいと思う。同時に、このメッセージをG7札幌 気候・エネルギー環境大臣会合に提案し、採用された方々の見識に敬意を表したい。

出展:札幌市 https://www.city.sapporo.jp/keizai/kanko/2023g7/message.html


住宅雑誌リプラン・141号より転載


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