Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.26「紙障子」
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 かつて、どの家にもあった紙障子は、家のなかをふんわりとさせ、和らかさと曖昧な叙情を漂わせてくれていたが、近ごろ、和室が少なくなったせいか、紙障子を見ることが少ない。私は、紙障子の持つ風合いを楽しむために、和室に限らず大きな洋室の居間や茶の間の窓の内側に紙障子を使うことが多い。二重硝子の窓の内側に紙障子を設けると断熱効果もある。さらに断熱効果を高めるために、桟の両面に紙を貼ることもあるが、これは、桟に埃が溜まることが無いので、桟の掃除が面倒な人にも喜ばれる。もっと断熱効果を上げたい人は、さらに厚手のカーテンをすれば、ねんねこを着込んだように完璧である。しかし、厚手のカーテンをすると、外から家の灯りがちっとも見えないので寂しい。
 三十年ほど前に、北ヨーロッパの住宅を見学した時、小振りな居間に1メートル近い大きさの紙提灯が、堂々とぶら下がっていたのに驚かされた。イサム・ノグチのデザインした紙の提灯であったが、これも紙提灯といえる。冬に長い夜を過ごす北国の人たちが、灯りに対して如何に敏感であるかを教えられ、明るさよりも、むしろ灯りの表情や光の質感に大変気を使っているのを感じた。その彼らが、和紙や紙障子の良さを灯りの面から評価してくれていたのである。私たちも、紙障子を伝統的な素材というより、新しい光の素材、灯りの素材として、住まいのなかに取り入れたいものである。

住宅雑誌リプラン・41号より転載
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