Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.29「ハイリスク・ハイリターン」
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 北海道の人は、新しいもの好きだ、といわれる。新商品の売れ行きを探るために、全国に先駆けて、テスト販売をするという。そういうわたしも新しいものに目が無い。厚さが六ミリほどのペア硝子があるといわれれば、使ってみたいし、ポリカーボネイトで、ペア硝子と同じ性能のものがあるといえば、すぐ使ってみたいとか思ってしまう。
 去年、ハイリスク・ハイリターンに挑戦する人が居たおかげで、六ミリの厚さのペア硝子と断熱性能の良いポリカーボネイトに挟まれた、吹き抜けの土間空間を造ることができた。雪の一段と多かった今年の冬の寒さには、充分に快適で、ハイリターンであった。しかし、西に向いたガラス張りの土間空間の夏は、これからである。さまざまな手立てを周到に準備しているとはいえ、本当に暑い夏をうまく過ごせるか、正直いうと少し不安もある。
 しかし、新しい素材に挑戦する時には、いつもリスクがついてまわる覚悟が必要である。お金儲けは、ハイリスク・ハイリターンといわれるが、住宅造りでは、ノーリスク・ハイリターンが、理想である。でも、あまりノーリスクにこだわるとローリターンもしくはノーリターンとなり、平凡なものにしかならない。それではノータリンである。新しい挑戦という意味からは、ローリスク・ハイリターンぐらいを目指したい。そしてそのローリスク・ハイリターンの積みかさねが、将来のノーリスク・ハイリターンにつながり、新しい技法を造り、新しい空間を創り出すことにつながる。さらには、新しい暮らし方にまでつながる。
 ローリスク・ハイリターンの新しい技術的挑戦こそが、寒さの厳しい北国の新しい暮らしと空間を創造するに違いない。

住宅雑誌リプラン・44号より転載
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