Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.38「広葉樹」
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 去年の暮れにでき上がった家で、ようやく庭づくりが始まった。北海道でも南の面は思った以上に暑くなり、夏には冷房が欲しくなる。
 南面がほとんどガラス張りのこの家は、ひどく暑くなりそうである。陽が当たらないように、すだれ代わりに大きなミズナラの樹を植えることにした。夏には、この樹の木陰を抜ける涼やかな風を楽しめると思う。
 夏、邪魔だった陽の光は、冬になると反対にその温かさを暖房に使える。なかでも、しっかりと断熱をした蓄熱量の多い家では、太陽が出ると暖房器を止めるくらいになる。夏は葉を茂らせて陽射しを防ぎ、冷房を止めさせ、冬には葉を落として暖房を止めさせる広葉樹は、北海道の庭に植える木としては、最もふさわしい。
 といっても、晩秋の風の強い日に降り積もる落ち葉の量は、凄い。確かに、集めるだけでも一苦労である。しかし、その厄介者の落ち葉は、造園屋で売っている「腐葉土」の原料であり、環境に優しい天然肥料の代表でさえある。落ち葉は大事な資源としてもっと大切にしなくてはいけない。
 公園の樹木からの落ち葉が、じぶんの家の庭に舞い込むので枝を払えといわれ、公園の樹をまるで街路樹のように、幹だけの寂しい姿に刈り上げたという。哀しい。太陽の恵みをもっと大切に思い、自然と一緒になって、樹木の四季を、移り変わりを楽しみたいものである。

※このエッセイは2001年夏に掲載されたものです
住宅雑誌リプラン・53号より転載
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