Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.49「うちのそとからそとへ」
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  北海道のすまいは温かくするために、まず「うち」と「そと」を断熱材でしっかり遮断しなければならない。そのせいで、閉鎖的なすまいになり、半年におよぶ雪と寒さの冬の間は「うち」に閉じこもりやすい。もっと開放感のあるすまいにしなければと思い、「うち」のなかに居るのに、「そと」に居るような感じのする「うちのそと」を造ることを心掛けてきた。
 断熱性能が良くなったことで、それまでは造ってはいけないとされていた吹き抜けも造ることができるようになり、開放的な「うちのそと」のような空間が、すまいのなかにどんどん造れるようになった。しかし「そと」と身近につながった感じのものは少なかった。
 「うち」と「そと」の間にある「土間」をもっと快適で、魅力的なものにしたら、「そと」につながる「うちのそと」が創れるに違いないといくつか試みてきた。特に庭に面して開放的に造られた「土間」は、「そと」ののびやかさにつながる「うちのそと」となる。春になって、風も空も雲もさわやかに春めいて、陽射しも柔らかくなってくると、「そと」の春が「土間」に入ってくるように思える。心がうきうきして「土間」は、まるで陽だまりを楽しむコンサーヴァトリィとなる。北海道の春を楽しむ「うちのそと」になる。
 私はこれにとどまらず、さらに「うち」と「そと」をつなげてみたい。「そと」に居るのに「うち」に居るような感じのする「そとのうち」を創りたいと思う。そうすると家(うち)と庭(そと)が、滑らかにつながって、家(うち)と庭(そと)が一体になり、敷地いっぱいを使い切った、四季を通じて楽しめるすまいになる。  「うちのそと」から「そと」に向かいたいものである。

住宅雑誌リプラン・64号より転載
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