Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.5「天井」
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 近頃、座る高さの低いソファやテーブルが重宝がられているようです。特に、天井の低いマンションに住んでいる人に多いようですね。今まで使っていた椅子やテーブルを、マンションに持ち込んでみると頭が天井に近くなりすぎて、鬱っとうしくなるからです。なんとか頭の上の広さを大きくしようとして、背の低いソファやテーブルを使うようになったのです。
 つまり、住む人の寸法に合わせて天井の高さが決められたのではなくて、天井の高さにあわせて住む人が頭の位置を低くしているのです。こんなところが外人に、鶏小屋と日本の住まいのことをいわれる理由です。これでは主客転倒です。
 もっと住む人を大事にしなければなりません。
 日本の木造建築は、世界に誇れる伝統と技術を持っていました。新しい生活様式の浸透で、それらは次第に伝わり難くなっていましたが、とりわけ北海道では、様式の生活が早く定着したために伝統的技術が伝わっていないようです。残念なことです。
 和風の建築を作るときの基準に、木割というものがあります。そこには、天井の高さは部屋の大きさによって決めるように書かれています。たとえば、8畳間は2メートル43センチであり、12畳間は2メートル79センチになります。これだけの高さをとると、天井が鬱っとうしいとは思われません。しかしこれは、畳に座っている人にとって天井の高さのことです。現代のように椅子に座ることが多くなれば、その分頭の位置が高くなり天井が低く感じられて、鬱っとうしくなるわけです。
 だから洋室は、和室に比べて天井をさらに高くしたいものです。といっても、むやみに天井を高くすることはできません。せめて、住む人がいじけないような天井の高さにして欲しいものです。

住宅雑誌リプラン・20号より転載
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