Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.23「ガーデニング」
写真
標茶町の虹別に小さな堰があり、そこから流れ出る水が川底に繁茂している水草を揺るがせ、流れる様子は冷たく澄んで美しい。見るだけで涼しさと爽やかさが体に溢れる。
湧き水を集めて流れ出た水が堰を超え川となって遙かな海に出て、雲となって山に降り注ぎ、地面にしみて再び湧き水となって還ってくる。
この水の天地を駆けめぐる果てしない循環が、絶え間ない美しい水の流れを保ち続けてきた理由であるが、その水の流れの美しさと同時に、川岸の水辺の領域が、水中植物を初めとした小さな動植物たちの生息を促し、さらにそれよりも大きな動植物を生息させていることが注目されてきている。
いままで水の流れを良くするために曲がりくねった川をまっすぐになるようにコンクリートで護岸していたが、それを反省して自然の土や石を使った、むしろゆるやかな流れを感じさせる曲線の岸辺を作るようになってきた。岸辺で藻や草が育つことによって小さな魚や昆虫が住み着いてきているが、それによって食物連鎖が生まれ、よりさまざまな動植物が集まり始め、自然界の営みを回復できるようになってきた。近頃いくつかの町で、蛍を育成させるほどきれいな川にしようと試みているが楽しみである。
しかし家の回りになると、どんな水たまりも許さないし、どんな虫もよせつけないようにしたいとか、虫の付く樹は植えない。落ち葉が多いのも掃除が大変だから、なるべく針葉樹が良い、という人も多い。しかし枯れ葉が多いのも掃除が大変だから、なるべく針葉樹が良い、という人も多い。しかし枯れ葉には地中の毒を中和させる力があり、土地の浄化に役立ち肥料にもなることが分かってきている。それぞれの庭も川辺のの水辺のように、小さな動植物の生息を促しながら、自然の循環を大事にすることが必要になってきたと思える。
今流行のガーデニングも、このような小動植物の生息を許すやさしさに満ちたものを目指しているはずである。アメリカ風の、蠅も蛾も徹底的に排除して人畜無害にしたディズニーランドを造るような真似から、自然そのままの、蟻やキリギリスのいるイギリスのガーデニングにしたいものである。

住宅雑誌リプラン・38号より転載
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