Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.25「素 地」
写真
 外断熱を施した住宅の外側の壁として、コンクリート・ブロックを使うことが多い。コンクリート・ブロックを積んで、素地のままにしているので、ブロック塀で作られている住宅のように見える。2階建てだが、工事現場の仮囲いが取り外されて全体の姿があらわになってから、建て主からは、何度も「どんな色を塗るのですか」と聞かれたという。その度に、申し訳なさそうに「何にも塗らない」と答える。
 「そうか自然のままの感じなんだ」と云う人の他は、皆黙ってしまうという。私はそのまま、素地のままが良いと思う。色があっても、素材に色をつけたものは、時が経っても、魅力が保つ。洗いざらしのジーパン、綿のシャツ、ジュートや麻やヘッシャンクロスなど自然素材を見直すようになってきたのも、この素地の良さに気が付いたからではないだろうか。
 確かに色を塗ることで楽しくなったり、明るくなったりするが、色は時の経過と共にあせる。あせた姿は、みすぼらしくて美しくない。それにくらべて素地のものは、時を経る程に味わいが深まり、魅力的になる。美しく年を重ねるというやつである。誰も彼も、すぐはがれる厚化粧を止めて・素っぴんで勝負しろとは云わないが、若い時には素材の持つ新鮮な魅力を楽しんで欲しいものである。コンクリート・ブロック素地のままの外壁は、年を経る程に味のある表情になるに違いない。楽しみにして欲しい。

住宅雑誌リプラン・40号より転載
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