Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.28「ツリーハウス」
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 敷地の持つさまざまな条件は、そこに建てる住まいの形に影響を及ぼすので、敷地選びは慎重でなければならない。「住宅を計画しているが、土地の取得の相談にのってくれるか」という問い合わせに、土地は建物の造り方をほとんど決めてしまうので、十分時間をかけて探されたほうが良いと答えた。一年ぐらいかけて土地を探すに違いないと思っていたら、ひと月経って土地が見つかったという。約80坪のところに25メートルを越える樹木が7本もあり、林というより、森に近い。これらの大木をなんとか残して住宅を建てることとなったが、なかなか難しい。「ツリーハウス」という本を見付けた。南アフリカや東南アジアを起源に持つ樹木のうえに住まいを造るもので、アウトドアライフの盛んなアメリカなどでセルフビルドで造っているものを紹介している。大木の樹の股に、まるで鳥の巣のように造られていて、長い梯子が付いたり、廻り階段を付けているが、日常の土地を離れて、爽やかな風と一体になれそうである。小さな庭いじりをはるかに凌駕し、天空に意識が解放されそうであった。
 しかし、住宅金融公庫の融資を受けることができないので、ツリーハウスを造ることはあきらめたが、樹木を残して建てることにはなった。大きな窓を造り、あたかもツリーハウスのなかにいるような気分になれる仕掛けも造ったが、やはり、ツリーハウスの持つ爽やかさに及ぶものではない。
 景気浮揚策として、住宅金融公庫は金利を下げ、融資枠を広げてくれているが、住まい自体にも融資できる幅を持たせて欲しい。このような爽やかな空間を造ることで、今日この頃の重くのしかかっているような閉塞感を突き破る精神的な力とパワーが持てるようになる気がする。住宅にもっと自由を!

住宅雑誌リプラン・43号より転載
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