Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.30「笑顔」
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 住んでいる隣に家を建てることは少ないが、たまたま隣の敷地が手に入った時などは、仕事にくる職人さんたちに挨拶をすることになるが、これを疎かにしてはいけません。
 コンクリートブロックの家が出来上がり、現場で苦労した人たちが、新しい家に招かれた。
 細かな処にまで気を配って造られた家だが、室内にむき出しになっているコンクリートブロックがブロックと思われないほど、端正に積み上がっていることが話題になった。いつもきれいに積む二人組の職人さんだが、「一段ときれいだ」「さすが、北海道一番だ」などと皆がおだてあげた。酔いが回ったせいもあって、「いやー」と照れながら、そのわけを話した。毎朝、娘さんを玄関の外まで送りに出る奥さんが、かならず、「お早うございます。いつもご苦労さまです」と優しい笑顔で、にっこり挨拶されるのが嬉しくて、気持ち良く仕事ができたという。「そのうち、その笑顔にあうのが、楽しみになってさ、いっつも、早くに来たさ。そのおかげで丁寧な仕事が、できたのかもしんね」という。
 「それじゃー、仕上がり良くするには、予算より”笑顔”があれば良いんだ。」「これから”笑顔”だけで頼むよ。」「いや、いやそりゃーやっぱし、ヒトによるわな」などと酒の肴にされてしまったが、家を造るのには、ほんとに多くの人の技術と一緒に、良いものを造ろうという気持ちが関わってくるので、頼む側にも、謙虚に造ってもらうという姿勢や優しい笑顔が、欠かせないのです。さあ、優しい笑顔の練習しましょう。

住宅雑誌リプラン・45号より転載
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