Essay by Maruyama/連載エッセイ

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 近代建築の三大巨匠といわれるル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエには、その原点とも言うべき住宅がある。それぞれの建築への思いや思想を理解してくれた施主に恵まれ、コルビュジエはサヴォア邸、ライトは落水荘、ミースはファンズワース邸、それぞれの感性の結晶と呼ぶのにふさわしい名建築を建てている。
 それに先立ち一九二七年にドイツのシュツットガルトで、コルビュジエやミースを含む十六人の建築家が参加して、建て売りの住宅展示会を開催している。それまでの「装飾的な生活様式を変えよう」というキャッチフレーズを掲げ、見るからにこれからの建築らしい近代的なデザインの三十三棟を建設したが、六月二十三日から十月三十日までの間に、約五十万人が訪れたという。
 近代建築を嫌ったヒットラー政権や第二次世界大戦を経て、九十年も経った今、改修したり、老朽化した建物を建設当初の姿に戻そうとしているというので、外断熱の研修のついでに、ワイゼンホーフジードルンクを訪れた。
 コルビュジエが、近代建築の四大原則と言った平らな屋根と自由な平面、一階を柱だけにしたピロティ、横長連続の窓、屋上庭園が、はっきり読み取れる二軒つながりの建物が、当初の姿にすっきりときれいに復元されていた。階段室の色彩も設計当初のスケッチを基にして復元したというが、なかなか微妙な色で興味深かった。
 初めて見たときは「なんだ、思ったより普通じゃないか」と思ったが、九十年前に建てられながら、現代の目でまったく違和感のないことを考えるうちに「やっぱり巨匠だ」と実感させられた。
 と同時に、九十年前の優れた建物を設計当初の姿に復元して、その建築的価値を残そうとするドイツの人たちを羨ましいと思った。札幌では、一昨年辺りから市内の魅力的な住宅が、次々と壊されたことが、思い出されて、いっそう悔しいと思った。

住宅雑誌リプラン・81号より転載
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